2023年5月から9月までの熱中症による救急搬送数は9万人を超え、年々増加傾向にあります。
そのうち仕事場での発生も全体の10%を占め、職場での熱中症対策は、企業の社会的責任といえます。
企業には従業員の心身の健康を守り、安全に業務ができるようにするための「安全配慮義務」があります。
これは厚生労働省が打ち出している政策であり、企業が安全配慮義務として行うことは以下の通りです。
熱中症は重度になれば死亡することもある症状で、環境省では全国の厚さ指数(WBGT)や、熱中症警告アラートなどの情報を示しています。
事業者向けには暑さ指数の電子情報提供サービスも実施し、これを元に企業側は職場での熱中症対策を行う必要があります。
他にも熱中症になる原因や対策のポイントを抑えることで、仕事中の熱中症発症率を下げることも可能です。
こちらの記事では熱中症対策や職場で使える熱中症対策グッズ、熱中症に関する疑問などをまとめました。
職場で熱中症になる原因は、以下の3つの要因によって発症することが多くなっています。
【気象環境要因】
熱中症は気温が高いだけでなく、湿度や日差しも関係しています。
気象環境要因とは気温が高い・湿度が高い・風が弱い・日差しが強い・室内を閉め切っている・エアコンのない場所・急激な気温上昇などが挙げられます。
【健康状態要因】
健康状態が要因となるものは、高齢者・障害のある人・糖尿病や心臓病などの持病・肥満・二日酔いや寝不足を含む体調不良があります。
【行動要因】
行動要因は激しい運動やなれない運動、外での作業時間が長い、水分が摂りにくい環境です。
上記3つの要因が1つでもあれば熱中症になりやすく、すべて揃えば危険性も上がります。
特に職場では休憩時間が決まっている、状況によっては屋外作業が必須となる場合もあります。
また、日本人はその国民性から「もう少し」「まだ大丈夫」と無理をする傾向にあるので、注意が必要です。
職場での熱中症対策として最も重要なのは、社内全体で熱中症や対策に関する正しい知識を身につけることです。
屋外だけでなく屋内でも注意が必要な、熱中症対策5つのポイントをチェックしてみましょう。
熱中症対策のポイントとして、暑さ指数(WBGT値)を引き下げて基準値を超えないようにすることです。
暑さ指数(WBGT値)とは熱中症予防のための基準であり、気温・湿度・ふく射熱(地面や建物から放出される熱)から計算されます。
暑さ指数が28を超えると一気に熱中症発症率が上がります。熱中症対策には作業場所や作業環境によって、意識的に暑さ指数(WBGT値)を下げるようにしてください。
WBGT値を下げるには、以下の方法があります。
屋外か・屋内かで状況が変わってくるため、場所に応じた対策が求められます。
熱中症にならないため、休憩場所の設備内容や準備しておくと良いものなどはこちらを参考にしてください。
休憩場所が遠い、近くに設備を設置する室内がない、狭い場所では、ビニールハウスやアウトドア用テントで、スポットクーラーやミスト扇風機を常に稼働させる方法もあります。
また、直射日光を避けるための日陰を作るだけでも有効です。
建築現場では足場と遮熱シートを利用した、簡易的な日陰を確保してもいいでしょう。
どのような場所でも休息と同時に身体を冷やせる設備や、水分と塩分補給ができる環境を整えることが重要です。
職場での熱中症対策では従業員の作業時間や作業状況をしっかりと管理しましょう。
長時間での連続作業は避け、作業時間を短縮して適度に身体を休めることも必要です。
また、暑さに身体が慣れていないために起こることも多いため、暑熱順化・身体が暑さに慣れるまでの期間を7日以上は設けましょう。
作業中には、定期的に水分及び塩分を摂取するようにします。
特に暑さ指数(WBGT)28以上になる場合には、0.1-0.2%の食塩水やスポーツドリンク、経口補水液などを20分おきに摂取してください。
作業するときの服装にも気を付けます。透湿性や通気性に優れた素材の衣服や、屋外では日差しを避けるための帽子を被ります。
【熱中症対策による作業管理】
職場での熱中症対策として上記の作業管理を徹底するために、作業中は職場巡視を行い、作業員の健康状態や水分及び塩分摂取状況の確認をするといいでしょう。
体調不良は熱中症を発症する原因にもなるので、熱中症対策として従業員の健康管理もポイントのひとつです。
健康管理は健康診断結果や普段の健康状況、作業前の体調確認、作業時の状況確認があります。
【健康診断結果】
職場では定期的に健康診断が行われますが、その結果持病が発覚した人に対して適切な対応を行います。
特に肥満体質や筋肉量が少ない人、糖尿病、高血圧、心臓病、腎臓病、皮膚疾患や服薬中の人は、必ず主治医や産業医に相談して作業負担を減らすなどの措置をとってください。
【日常の健康管理】
体調不良は熱中症発症の危険があるため、日常の健康管理も重要です。寝不足や二日酔い、風邪気味などでも熱中症になりやすいので注意してください。
また、朝食を食べない人も気をつける必要があります。
【作業前の体調チェック】
作業前には従業員に対して体調不良がないかを確認します。
確認することは充分な睡眠や、前日の飲酒量、朝食の有無、下痢や発熱などはないか、などです。
もし作業前に従業員の体調不良が確認できた場合には、作業内容の変更や負担軽減を提案してください。
また、従業員同士で声をかけて体調をチェックし、不調が見られた場合には適切な処置を行いましょう。
【作業時の身体状況確認】
作業前は健康な状態であっても、作業中に変化することもあります。そのため、作業時の身体状況確認も必須となります。
休憩場所に体温計や体重計を置いて必要時には計測し、顔色が悪くないか、急激な疲労感やめまいがないかなどをチェックします。
熱中症は疲労が溜まるほど発症しやすいので、従業員の作業時の体調管理にも注意してください。
企業側だけが熱中症対策を行っても効果は半減です。従業員に対してもあらかじめ労働衛生教育をしておきましょう。
熱中症は高温多湿になる環境で発症しやすく、そういった職場では管理者または労働者を対象とする教育を徹底しましょう。
特に建設業や製造業は熱中症による死者数が多い職場なので、作業者と管理者共に教育が必要です。
熱中症に対する労働衛生教育は厚生労働省が発足したものですが、法律などで義務付けられたものではありません。
しかし、労働者の健康を守るだけでなく、企業の信用を守るためにも必要な教育なので、企業全体での受講が推奨されます。
受講方法は対面受講・出張受講・オンライン受講があります。対面受講は技能講習協会や建設労働災害防止協会で開催されています。
従業員の人数が多い企業では講師を呼ぶ出張受講がおすすめで、オンライン受講はインターネット環境があれば、どこでも受講可能です。
【作業者向けの労働衛生教育】
No. | カリキュラム | 講習時間 |
---|---|---|
1 | 熱中症の症状 | 30分 |
2 | 熱中症の予防方法 | 1時間30分 |
3 | 緊急時の救急処置 | 15分 |
4 | 熱中症の事例 | 15分 |
【管理者向けの労働衛生教育】
No. | カリキュラム | 講習時間 |
---|---|---|
1 | 熱中症の症状 | 30分 |
2 | 熱中症の予防方法 | 2時間30分 |
3 | 緊急時の救急処置 | 15分 |
4 | 熱中症の事例 | 15分 |
熱中症になってしまったときの症状や対策も、しっかりと確認しておきましょう。以下のような症状が現れたら、注意してください。
【熱中症の症状別対処方法】
重症度 | 対処法 | 症状 | 対策 | 臨床症状からの分類 |
---|---|---|---|---|
軽症(1度) | 応急処置と見守り | めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返り | 現場で対応、冷所での安静、身体を冷やす、水分及び塩分摂取 | 熱けいれん、熱失神
症状が改善している場合は現場対応、応急処置でOK |
中等症(2度) | 医療機関へ行く | 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下 | 医療機関での診察が必要、体温管理、安静、水分及び塩分摂取(場合によっては点滴) | 熱疲労
中等症(2度)の症状を発症したり、軽症(1度)に改善が見られない場合にはすぐに病院へ行く(周りの人が判断する) |
重症(3度) | 入院治療 | 体温が高い、皮膚の異常、呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない、水分補給できない | 入院治療、場合によっては集中治療が必要
体温管理(体表・体内冷却、血管冷却) |
熱射病
重症(3度)がどうかは救急隊員や医療機関での医師の診療・検査で診断 |
屋外の職場は、直射日光や高温多湿で常に熱中症の危険と隣り合わせです。
室内のようにクーラーなどの冷房もなく、冷たい飲み物を冷やす冷蔵庫がない場所も少なくありません。
そこで屋外での職場におすすめの熱中症対策グッズを紹介します。
ベスト備え付けの送風機が起こす風のチカラで体を冷やし、夏の作業を涼しくサポートします。
内側には冷感タオルや保冷剤を入れられるメッシュポケット付き。座った時にファンが当たらない設計となっています。
肌のベタつきやニオイのもとになる汗や汚れを取り除く、フェイス&ボディ用クールシートです。
70枚の大容量で、作業後の汗や汚れをガッツリふき取ることができます。
1粒に300mg以上の塩分を含んだ熱中飴で、暑い夏でも食べやすいさっぱりした味が揃っています。
大容量でそのまま置くことができるスタンドパッケージなので、屋外の休憩場所にそのまま設置できます。
容量 | 500g |
---|---|
個数 | 約100粒 |
味 | 夏みかん味、梅塩味、レモン塩味 |
販売期間 | 4月から9月頃のみ |
価格 | 1,382円(税込) |
熱中症は、室内でも発症する可能性はあります。そこでオフィスで働く人は、こちらで紹介する熱中症対策グッズをチェックしてみましょう。
18℃の冷たさが続くPCM素材が首もとの熱を吸収するネックリングです。
両手を自由にした状態で身体を冷やせるので、外の作業にもおすすめ。
冷蔵庫など18℃以下の環境に置くことで固まるので、事前に冷やしてご利用ください。
温度や室温だけでなく過去の最高・最低温度や湿度も表示されるデジタル温湿度計は、小型タイプとアラーム機能付きの大型タイプの2種類があります。
どちらもマグネット・置き式・壁掛けの3WAYタイプです。熱中症は温度だけでなく湿度にも注意が必要なので、オフィスに1つあるだけで熱中症対策もしやすくなります。
寸法 | 小:75×30×75mm、大:75×30×132mm |
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質量 | 小:100g、大:約168g |
測定範囲 | 温度:-5.0から50.0度、湿度:20から95% |
表示内容 | 時計、日付、曜日、温度、湿度、最高・最低温度、最高・最低湿度、大のみ快適レベル3段階あり |
価格 | 1,680-5,874円 |
オフィス内の空気を循環させ、部屋中に涼しい風を送ることができるサーキュレーターは、冷房効率アップにもおすすめの商品です。
コンパクトサイズですがハイパワーなので、効率良くエアコンの風が循環できます。自動首振り機能や消し忘れ帽子のタイマー機能、リモコン付きで手軽に使えます。
寸法 | 幅210×奥行210×高さ288mm |
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羽根径 | 150mm |
電源コード長さ | 約1.4m |
質量 | 約2.0kg |
風量調節 | 5段階 |
角度調節 | 左右自動:90度、上下自動:70度 |
タイマー | 2・4・8時間 |
消費電力 | 最大50Hz:39W、60Hz:37W |
付属品 | リモコン |
価格 | 12,500円(税込) |
熱中症対策にはいろいろありますが、対策のポイントや予防するための準備以外にも気になることは少なくありません。
そこで、職場での熱中症に対するよくある質問をまとめました。
熱中症になってしまったとき、場合によっては病院で受診したり、点滴などの適切な処置が必要になることもあります。
そこで気になるのが「労災認定」されるかどうかです。
通常熱中症は業務中だけでなく、通勤中であっても労災認定されます。
しかし、すべての熱中症が認定されるわけではないので、注意してください。
【労災認定される場合】
上記のように、熱中症を発症した原因が職場環境や業務内容の高負荷、という場合には労災認定される可能性が高くなります。
他にも自宅から職場までの往復時や、現在の作業場所から別の作業場所への移動中に熱中症になった場合も、労災認定されることがあります。
“労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による傷病などに対して、必要な保険給付を行うものです。この制度の補償の対象となる疾病は「職業病リスト」で定めています。”
(引用:労災補償 厚生労働省)閲覧日:2024年4月26日
“職業病リスト(労働基準法施行規則別表第1の2)8暑熱な場所における業務による熱中症”
(引用:職業病リスト(労働基準法施行規則別表第1の2) 厚生労働省)閲覧日:2024年4月26日
【労災認定されない場合】
職場からの帰り道であっても帰宅前にお店で飲酒したり、スポーツやジムなどで脱水症状を引き起こして熱中症になった場合や、帰宅後の自宅が暑くて熱中症になったなど、個人的要因の場合は労災認定されません。
仕事中に熱中症になった場合は、以下の処置を行ってください。
熱中症は重症度に合わせた適切な処置が必要ですが、どの症状でもまずは意識確認と涼しい場所への移動が先決です。
その後、意識がしっかりしているようであれば水分及び塩分補給と、十分な休憩をしましょう。
熱中症予防管理者は、熱中症予防のために必要な教育や指導をする人のことです。
職場にはこの熱中症予防管理者を置く義務はありませんが、熱中症予防のためにも熱中症に対する正しい知識が必要です。
そのためできる限り、知識のある管理者の元での作業が重要になります。
どんな職業でも環境によって熱中症を発症する危険性はあります。
しかし、熱中症が発生しやすい要因がある職場があるのも事実です。熱中症にかかるリスクの高い職場は以下の通りです。
上記を踏まえた上で熱中症になりやすいとされる職業は、建設業・製造業・運送業・警備業・商業などになります。
これらの職場で働いている人は、熱中症予防を徹底しておきましょう。
熱中症予防のためには水分及び塩分を補給することが必須です。熱中症対策として、水分補給におすすめの飲み物を見てみましょう。
【水分補給におすすめのドリンク】
赤穂化成 スムーズイオン経口補水液500ml | 大塚製薬 ポカリスエット 1L用粉末 |
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500ml、シトラス風味、熱中症対策の定番 | 1L粉末、74g、コスパよし |
職場でいくら熱中症対策を行っていても、個人的になにもしなければ効果は半減します。
職場で熱中症にならないための、個人でできる対策もチェックしておきましょう。
規則正しい食事をすることは、健康な身体づくりのためにも必要なことです。
朝食を抜くだけでも熱中症になる確率はあがるので、朝昼晩としっかりと栄養バランスを考えた食事を心がけましょう。
また、水分補給は仕事中だけでなく、起床時や汗をかいたあとなど、できるだけ「喉が乾いた」と感じる前に水分補給してください。
暑さを避ける工夫としては、屋外作業時は帽子を被り、日陰をつくるようにします。
室内の場合でも無理な節電をしないで、冷房を使ってください。
暑さに慣れていなければ熱中症にもなりやすいので、熱くなり始めたと感じたら、適度な運動で身体をならしましょう。
職場での熱中症を予防するためには、熱中症の原因を把握し、対策を練ることが重要です。
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※掲載されている情報はカウネットが独自に制作しています。掲載内容や商品仕様に変動がある場合がありますので、最新の商品の詳細や価格については、カウネットサイト商品詳細ページよりご確認ください。